KINGのタマゴのその後を追跡!

DJ SATOSHI OTSUKI Special Interview!世界を目指す若きDJの熱き想い

DJ SATOSHI OTSUKI--以前「KINGのタマゴ」にて、
自身のDJ観を語ってもらったが、その紹介後、さらなる舞台へと飛躍を遂げることとなった。
そこでタマゴのその後を追跡することを敢行。
 クラブという閉ざされた空間で、少し敷居の高さを感じる世界で活動する彼の
クラブミュージックにかける想いと、見据える未来を語ってもらった。

クラブミュージックとの出会い。そして人とのつながり

僕はDJを始めてまだ5年ほどで、経験はとても浅い方なんです。クラブミュージックに目覚めたのは、浪人生として寮生活をしているときにFAT BOY SLIMやTHE CHEMICAL BROTHERSを聴いたのがきっかけですね。

その後、大学時代に知り合いがVuenosというクラブでプレイしているのを見て刺激を受けて、大学二年生のときから、今はなきSIMOONというクラブで働き始めました。就職活動でいくつか会社も受けたんですが、途中で止めてしまいましたね。今思うと、クラブで働きだした時点でクラブミュージックの世界で生きていく覚悟を決めていたんだと思います。

だからクラブで働いていたときも、変な言い方ですけど、自分でパーティーを開催するときのことを考えて、関係者といろんなつながりを作ることを大事にしてました。
なぜなら、クラブの世界は既存の音楽マーケットほど成熟していないので、DJ自身が動いていく必要があるし、DJを通じていろいろ仕掛けながらやっていかないと、規模を大きくはできないと思うからです。

ミュージシャンのようにレーベルと契約してマネージメントされて活動しているDJはほんの一握りです。だから、クラブ関係者とのつながりがとても大事なんですよね。
僕も回しているWOMBという箱で別のパーティーをやっているDJと知り合って、自分のパーティーにゲストとして参加してもらって、そこからさらにDJや関係者を紹介してもらったりという感じです。

そのつながりが、今は、名古屋や神戸、京都、福岡、北海道……クラブカルチャーが隆盛している主要都市にも広がっています。なにかアクションを起こしたいときに必ず活きるつながりですよね。

メディアで取り上げられない部分のクラブミュージックを届けたい

箱(クラブ)で回すのと野外で回すのとは全然違いますね。まず音の響き方が違います。箱は音が反響しますけど、野外は広がっていきますから、それによって曲のセレクトも違ってきますし、PAがどんなシステムなのかも頭に入れて曲のセレクトをします。
先日出させてもらった『渚』のような屋外フェスティバルは、ライトなお客さんも多いですから、なるべくお客さんの感覚に近い音を意識的にチョイスしたりしますね。

僕自身、以前は、とにかく僕の音楽をみんなにわかってもらおうと、自分の世界観の押しつけになってたんですけど、今は、7割はお客さんに合わせて3割を自分の好きな音楽をかけるようにしています。友人の友人の友人に届けるくらいの感覚です(笑)。

フェスはいろんなジャンルの音楽があって、それぞれのジャンルが好きなお客さんがいるので、自分と違うジャンルのお客さんが、僕の音で踊ってくれるとすごく嬉しいですよ。
渚は都心からのアクセスもいいし、他のフェスより気軽に遊びに行ける環境にあるから、今後も続いていって根づいてほしいですね。僕も積極的に関わっていきたいと思ってます。

今、クラブミュージックがメディアで取り上げられることも多いですが、流行というか偏りはどうしてもありますよね。クラブミュージックが広まることはいいことなんですが、メディアの力はとても大きいので、今のままだと限定された世界観しか伝わらないことになってしまいます。
語弊を恐れずに言えば、「digitalism」や「JUSTICE」といったアーティストの曲が、メディアで取り上げられることで、クラブミュージックをメインで聴いてないリスナーにも届いているんですね。でも、ずっと残り続けるかというと、きっと一過性で終わってしまうと思うんです。
そういった音楽ばかりがメディアで報じられて、それがクラブミュージックのすべてという印象を持たれるのは、DJとしてとても危険なことだと思うので、その枠を越えることを意識するようにしてます。

イベントの立体化は、お客の先入観を壊し、
世界へ発信するためのプロデュース

日本人って手先が器用だからDJのプレイレベルは外国より高いんですけど(笑)、それだけじゃ認められづらいのも確かですよ。KEN ISHIIさんや石野卓球さんのように、テクノシーンには海外でも人気のDJはいるんですが、海外が持つ「日本の音」のイメージは未だに「和楽器」なので、日本のオリジナリティを出す難しさは課題としてあります。

ただ、世界で認められる方法はそれだけじゃないとも思っています。トリノ五輪の開会式をプロデュースしたRichie Hawtin(リッチー・ホウティン)やSven Vath(スヴェン・ヴァス)という世界的に有名なDJは、プレイももちろん上手いですけど、同じくらい商才に長けているんです。自分たちの売り込み方も知っている。Sven Vathなんて、すごく陽気で気さくな人ですけど、ドイツシーンのトップに君臨して、ドイツじゃみんなから尊敬の眼差しで見られてますからね(笑)。

僕もDJとして、ただクラブで回すだけじゃなく、クラブをデコレーションして、見た目を変化させたり、飲食スペースを設けてお祭りのようなイメージを作ったり、視覚や嗅覚も刺激できる内容で「非日常感」を演出して、箱に対する先入観を壊すことを意識しています。

ほかにも、主催している『TRES VIBES』というパーティーとBEAMSとでコラボTシャツを作ったりしているんですが、そうやってイベントを立体化しながら仕掛けていくと、より多くの人に自分の音楽を届けられるんじゃないかって思うんです。

おかげさまで、コラボTシャツは反響が大きかったようで、東京地区限定だったんですけど、今度地区を拡大して販売されることが決まりました。カッコイイことをやりつつお金もしっかりと、とですね(笑)。

なので、ときどき「プロデューサーみたい」と言われることもありますね。でも、今は音楽やイベントやファッション……いろいろなジャンルに世界を広げていますけど、それらのすべてがDJの活動に戻ってくるようにすることを考えてますから。そうやって世界へ向けて日本のクラブミュージックを発信していきたいんです。