KING創刊号 武器よ、さらば!

シアトル射撃『よく分かるM16』

A1とは、初期型で、A2はその改造型だ。

銃身の肉厚が太くなり、ヘビーバレルとなった。このお陰で、遠距離射撃における命中精度が増し、多弾数の発射も可能となった。
M16は、1960年に米軍が正式にしたライフルだ。それまで、M14ライフルが使用していた308NATO弾に変わって、小口径高速弾である223弾を採用した。
兵一人の携行できる弾薬量を増加させて、全自動射撃による火力を強化させる目的が、その変更理由だ。
M16はその後、A1から、A2、A3と改良が続いた。
そして、ベトナム、湾岸戦争、アフガン、イラク戦争と4度の大きい戦争に投入。
今なお、対テロ戦争の最前線で使用されている。

「この銃身の先に付いているのは、消炎器。弾を撃つ時に銃から噴出する発射炎を消す役割を担います」
こうしないと、敵からその発射炎が原因で自分の位置が暴露してしまう。撃って直ぐに、正確に自分のいる場所を撃たれたら、危険なのだ。

「次がフロントサイト。銃の照準に使います」
ここが曲がれば全ての「的に弾を当てる」と言う機能が失われてしまう。軍用小銃のフロントサイトが左右が鉄板で囲われて防護されている。フロントサイトの調整は223弾でできるように工夫されている。これは、戦場なので工具がない場合、そこに必ずあるものでできるようになっている。
ベテラン兵士は、最初にこのフロントサイトをライターで炙って焦がし、太陽光で反射しないようにするのだ。

「次がハンドガード。左手で銃を保持する際に握る場所です」
軍用ライフル弾が火薬の爆発によって、高速で銃身内を通過する場合、凄まじい熱を発する。金属の銃身を直接手で触ると火傷する。これを防ぐのがこれ。
マテルの玩具と60年代に兵士たちに言われたのもこのプラスチックの多用にあった。しかし、優れものなのだ。旧ソ連のAKM自動小銃のハンドガードは木製。一弾倉30発撃てば、熱くて素手で触れない。
M16は五弾倉を連続して撃っても、素手で触れる。基礎設計の違いである。上下に付いている穴は銃身の冷却を促すための空気通過口。

「その後方にあるのが、キャリアハンドル。ブリーフケースの取っ手のようになってます。ここに、照準に利用するリアサイトが内蔵されています。ピープサイトの穴のサイズは二種類。
小さい径のは中遠距離用、大きい径は近距離、夜間用となります」
標的をピープサイトの中に収め、フロントサイトの上に乗せる。その瞬間にトリガーを絞るのだ。

「リアサイトの横のダイヤルは照準調整と射撃距離によって、調整します」
223弾は射程距離100?300mで最大の威力を発する。近年は防弾ベストの性能が向上して、15-100mの至近距離での戦闘にも使用されている。

「リアサイトの後方下にあるの、T型の部分は、弾丸を薬室に装填するためのチャージングハンドル。右手人差し指でロック解除レバーを引いて、一気に引く。
すると、弾倉最上部の弾丸を薬室に送り込みます」
少尉殿はM16を横にして、右側面を見えるようにした。
「ここの長方形の開口部は、エジェクションポートと呼ばれ、弾丸を撃ち終えた空薬莢を薬室から排出する部分です。中に見えるのは、ボルト。内部で前後して、チャージングハンドルで、後退させられた時は弾倉上部から、弾丸を取り出して、薬室に送り込みます」
ボルトには、弾丸に内蔵された火薬を爆発させるための撃針が内臓されている。

撃針が作動すると、弾丸内臓の火薬が爆発燃焼。巨大な圧力で、弾頭が銃身内にガスと炎の共に飛び出す。そして、銃身を通過して、標的までの短い旅に出る。
一方、空薬莢は、後退するボルトに付属するエジェクターに引っ掛けられて、薬室から引っ張り出される。
そして、エジェクションポートから、空薬莢は外に排出される。
これが、一連の弾丸発射までのプロセスなのだ。

少尉殿の太い指は、エジェクションポート下のボタンに移動する。
「ここが、マガジンリリースボタン。押すとワンタッチで、マガジン(弾倉)が外れます」
電池パックが外れるように弾倉は外れた。
「この上のボタンはボルト・ホワード・アシスト・ボタン。初弾を装填した後、ボタンを押して、ボルトを前進させて、装填を確実にします」

ベトナム戦争に投入されたM16は最前線各地で不発を起こした。
原因は、銃内部に付着した火薬カスなどで、ボルトが前進しきらず、弾丸の薬室への装填不良となったのだ。
米軍は、直ぐに改良を実行。ボタンでボルトを尻から前に押して装填を完璧にする機構を備えたA1を1966年からベトナム最前線に投入を開始した。

少尉殿は、M16をくるりとひっくり返すと、左側面を見せた。
また、異なる幾つかのスイッチレバーが見えた。
「これは、ボルトリリースレバー」
少尉殿はチャージングハンドルを引くと、ダストカバーがバチンと開き、ボルトは後退した状態で止まった。
ボルトリリースレバーを作動させると、ガシーンと心地良い音と共に前進した。
「確実に、装填したい時はこれですね。アフガンで戦った時は、いつも、この方法で初弾を装填していましたね」
少尉殿は懐かしそうな表情を浮かべると、次のスイッチを示した。

「これはセレクターレバー。弾丸の発射形態を選択できます。セイフは、トリガーを引いても発射できない安全位置、セミは、一発ずつ撃つ単発、フルは、フルオート。全自動射撃で弾倉に弾がある限り、撃てます。これは民間モデルなので、セミまでしかありません」

だけど、本物のライフルなのだ。

Theend


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