4:「安倍政権の外交を検証する」
河合 安倍政権の過去半年の外交をどう評価されてますか?
佐藤 いま心配なのは、首相官邸と外務省に温度差が出ていることです。外務官僚が外交の住み分けさせているように見えます。ロシアは麻生、中国とアメリカは安倍、そして、中東は場当たり的、といったところかな。
河合 そういえば森元首相がやっていた外交特命委員会の答申が出ましたね。大使館を増やし、外務省職員を3000人増員するというやつですが、あれはどう見てます?
佐藤 全然、ダメでしょう。大使館を増やすといっても、増やせるところはアフリカと中南米、それから中央アジアしかないですよ。そんなところに行くのは「新人」か「変人」だけ(笑)。そもそも外務省の根本的な問題がわかっていない。外務省は糖尿病なんですよ。糖尿病の患者に栄養を摂らせたらますます弱ってしまうでしょう。現在、外務省には5000人いますが、それすらもちゃんとマネージメントできていない。そこに3000人も増やしたら、組織は潰れておしまいですよ。
それにしても気になるのは、いま森さんはかつて鈴木宗男さんがやっていた役割をしているような感じがする。外務省の言いなりになっている……。
河合 すると、彼も最終的に鈴木さんのようなことに?
佐藤 なるかもしれないね。
河合 で、外務省だけが永遠に生き残る。
佐藤 さすがですよ。高橋留美子のマンガ『人魚の森』に出てくる人魚と同じで絶対に死なない。あの生き残り能力はハンパじゃない。ゾンビのような組織だ。ただし、その能力は残念ながら、日本の国益や外交のためには使われない。自己保身と自己保存、自己蓄財に使われる。
河合 その潜在能力が外交に生かされればいいんだけどね。
佐藤 そうなったら最強ですよ。あとは覚悟の問題だな。北朝鮮の外交官なんてもう命がけですよ。ヘマしたら自分も家族もどうなるかわかったもんじゃない、という緊張感の中で仕事している。
帝政ロシア軍は、一番前にいる部隊はものすごく強かった。なぜかと言うと、後ろにいる狙撃兵が戦わないやつや逃げようとする兵士を後ろから射殺していたからです。兵士は前進するしかない。だから、ロシア軍は強かった。
日本軍には、戦陣訓がありましたよね。
河合 汝、虜囚の辱めを受けず。捕虜になってはいけないので死ぬまで戦う、か。
佐藤 そんな戦陣訓を外務省の中で出せば、みんな必死で仕事しますよ。
河合 鈴木宗男議員と佐藤さんの近著『反省』(アスコム刊)の中に、外務省の賭け麻雀について書かれてありましたね。かなりの金額が動くというから、胆力はかなりついてるかな。
佐藤 バクチに強いやつはやっぱり判断力が良かったね。ちょっと考えを変えれば、外務省もすごく良くなるんですよ。
河合 日本の外務省には新自由主義が必要だってことですか。
佐藤 まず、外務省改革に要るのは今の実態に対して国民が怒ることですよ。
河合 戦前の外務省はどうだったのかな。少しはマシだったのかな。
佐藤 いまと似たようなもんだったと思うよ。ただし戦前は軍があったから、外交が二元化していて切磋琢磨があった。
河合 やはり外務省のライバル組織を作るしかないか。
佐藤 外交は官邸で統括されればいい。
前にも言ったけど、外務省は窓口業務と条約交渉で2500名だけに縮小する。それから他省からODA担当2000人、経済担当が1000人、武官1500人を連れてくる。これで計7000名。いいかもね。
河合 やはり外交に首を突っ込める組織を他にも複数作って、外務省と競わせるようにしないとダメなんじゃないかな。アメリカなんかだと結構、議会が裏表両方で動いている。日本の国会じゃそういうことはできませんか?
佐藤 全然ダメでしょう、国会は。
河合 そうか(笑)。じゃあ、党は?
佐藤 もっとダメだよ。
河合 うーん、どうすればいいのかな。
佐藤 例えば社会保険庁の問題で有志が規格外の行動を取るんですよ。
河合 以前、登場したインテリジェンスの有志たちですか?
佐藤 今回は違う。たとえばさ、外交ではないけど、ホリエモンや、三木谷、村上が、個人資産を数百億円ずつ社会保険庁に寄付する。
「自己責任ではなく、社会的弱者に還元したい。そのために蓄財した金を出す」
とね。
もし彼らがそういう規格外の挙に出たら、日本のあらゆる流れが変わってきますよ。
河合 なるほど。そういう途方もないことを誰かがやって現状をブチ破るってことだね。
佐藤 そう。規格外の行動を取る。だけど、外務省改革には、まず社会保険庁並みの国民の怒りが必要だね。
河合 それにしても今回の本『反省』、面白かった。「深く反省しております」と言いながら、すべてを暴露する。大笑いさせてもらいました(笑)。
佐藤 これでもだいぶ、手加減してるんですよ。
河合 すばらしい反省の仕方ですよ(笑)。
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