2:「自爆テロはラーメンでなくせ」
佐藤 それにしても、なんで日本はイランに関する情報がこんなに少ないのかな。異常だと思いません?
河合 それはやっぱり遠いところにある「アラビアンナイト」の世界だからですよ。イランはアラブじゃないけど(笑)。あんまり日本人は興味ないし、イランとか中東情勢が重要だといってもピンとこない。
佐藤 「空飛ぶ絨毯」の世界だからね(笑)。あの連中のことを知りたければ、もっとイスラム教を研究しなきゃダメ。要するに彼らは死後の世界を信じているでしょ。あの世に味方がいるとか、現世で死んでも天国で生きられるとか。こういう思想を身につけたら強いですよ。だから、自爆テロも平気でやる。それに対して、こっちは市民社会とかこの世の論理でしか動いていないんだから。
河合 でも自爆テロをやる人間を作るには、相当長い洗脳期間が必要なんですよ。パレスチナの連中と話したときなんだけど……。
佐藤 ハマスの連中と話したことある?
河合 ありますよ。大物だったらヤシン師が暗殺された後、ハマスのリーダーになったランティシにインタビューしたことあるけど、彼もその後でイスラエルにミサイルをブチ込まれて殺されちゃった。自爆テロについて話したのは、ファタハ系のフォース17の将校やアルアクサ殉教者旅団の連中で、彼らがジェニンでイスラエル軍と10日間くらいの激戦を戦い抜いた直後でした。
その時、彼らはこう言っていた。
「イスラエル軍と戦って死ぬのは怖くない。それは望むところだ」と。
そこで、それなら自爆テロはできるか、と聞いた。てっきり、必要とあればやる、という答えが返ってくると思っていたんだけど、見事にはずれた。全員、できない、と言うんですね。戦って死ぬのも、自爆テロで死ぬのも同じなんじゃないか、と聞いたら、
「いや、それは違う。オレはイスラム教徒だけど自爆テロができるほど強い信仰心はない」
みんなそう言う。正直ですよね(笑)。でもイスラエル軍との戦闘なら平然と死ねるバリバリの戦士たちの言葉だけに、自爆テロの何たるかがわかったような気がしたな。やはり実行できる精神的な域に達するまでには、かなりの洗脳がいる。
佐藤 永久に達しないのが普通だよ。
河合 イラクで自爆テロする連中は、トラックに乗って出発する前は顔面蒼白になってるもんね。
佐藤 自爆テロの訓練には、死ぬのが怖くなくなるように墓場に死体と一緒に寝かせるような鍛錬をするからね。
河合 チェチェンだと女たちも自爆するでしょう。まだ15?16歳の少女たちが自爆テロを実行する直前のビデオを見たことがあるけど、これで神様の下に行けるってニコニコ笑っていた。いざとなるとやっぱり女のほうが男よりハラが据わるのかな(笑)。
佐藤 男たちが死んでいるからね。その愛する男を助けるために自爆する。それに自爆テロをやると残った一族を組織が面倒見てくれる。日本の1930年代の、東北の農村の女工哀史みたいな雰囲気だよね。
河合 スリランカでも女の自爆テロが多いね。
佐藤 自爆テロの最大の敵は何かと言えば、地元に産業を作られることなんですよ。特に、軽工業、衣料とか食品。対テロに一番効果的なのは、食い物がちゃんとある体制作りです。だから高カロリーのラーメンを製造する工場と肉の缶詰工場を作る。健康面を考えて、ビタミン工場もあったほうがいいかな。やっぱり食い物は強いですよ。食料がちゃんとあれば、命を賭けてまでの義憤はでてこない。
河合 そうなれば自爆テロの数も減るかな。
佐藤 さらに、異教徒は出ていかないほうがいい。イスラム教徒の中で処理させる。
河合 同感。異教徒がやると、また自爆テロの標的になる。
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